Wind of Myanmar

このアジアの片隅で…「11」

朝 市 風 景

 ヤンゴンにいる週末の朝は、近くの朝市に歩いて出かけるが日課というか、週課になった。朝市は他のアセアンの国々でも見かけるが、観光客が一人もいない、全く英語が通じない、こんな片田舎の朝市は私にとっても初めての経験だ。
 野菜、果物から卵、肉や魚類、衣類、日用雑貨等々、何でも手に入る。言葉が通じないので、買い物は片言のビルマ語。3ヶ月が経って、ようやく数字だけは何とか話せるようになったが、それでもヒアリングは別で、その数字さえなかなか聞き取れない。それにミャンマー通貨チャットは1,000チャットが約100円なので、いくら物価が安いと言っても10円以下のモノは少ないから、役に立つ数字は100から1,000の単位。一生懸命1から100までの数字を暗記しても、残念ながら買い物にはほとんど役に立たたない。よく考えると1から100が、買い物であまり役に立たないのは、日本も同じだ。加えて厄介なのは、なぜか1,000と10,000が発音が非常に近いので、間違えたら大変。まあ朝市で10,000チャット(1,000円)を超えるような物はまず見当たらないが・・・。
 ここの朝市の熱気や空気感は、今の日本ではなかなかお目にかかれないと思うし、別に何も買わなくても、ぶらっと見て歩くだけで結構楽しい。それが毎週通いたくなる理由かもしれない。

このアジアの片隅で…「12」

お坊さんの話

 以前にも少し触れたが、いくら仏教国とはいえ、ミャンマーにはお坊さんや尼さんの数がやたら多い。もちろん敬虔な信者も多く、毎朝列を連ねて托鉢に回るお坊さんに、お金だけではなく、順番にご飯やおかずをあげる人の姿をよく見かけるが、貰うお坊さんはもちろん、あげる人も必ず履物を脱いで裸足になるのがマナーのようだ。そういえば、私もミャンマーに来て裸足になる機会が増えた。というのも仏塔や寺院へ参拝する時は、入り口で必ず裸足になるのがルールで、長い階段を裸足で登ることになる。日陰はひんやりしてまだいいが、真っ昼間の日向はタイルが焼けて結構辛い。
 お坊さんの話に戻すと、ミャンマーにお坊さんが多いのは、万国共通の課題、就職難もあるらしい。ここでは誰もが最短3日間だけでも、なりたい時にお坊さんになれるようで、多くの一般人がある期間、本人の意思で頭を剃り、一生に一度はお坊さんを経験する。もちろん修行中はそれなりに厳しく規律正しい生活を強いられるようだが、辞めたくなったら、いつでも辞められるというから面白い。ところが実際には、当初予定していた一定期間が過ぎても、そのままお坊さんを続ける人が意外と多いらしい。理由はさっきの就職難、辞めても仕事がないからだという。お坊さんの間は、住むところや食べる心配はしなくていいし、みんなからも敬われる。もちろん功徳も積めるということで、意外と快適なのかもしれない。裸足で砂利道を歩けない私には絶対無理だが・・・。

このアジアの片隅で…「13」

百田ワールド

 現在、日本へ一時帰国していることもあって、今回はアジアではなく、時間も遡って昨年末の話を少し。

 昨年末は日本で過ごした。寒いのは苦手だけど、年末年始はやはり日本がいいと思う。久しぶりに時間の余裕もあったので、ゆっくり本でも読んで見ようかという気になり、以前から気になっていた本、百田尚樹の「海賊と呼ばれた男」を読み始めた。選んだ理由は、刺激的なタイトル。やはりタイトルは大切だ。中身は実話に基づいた石油タンカーの話というぐらいの知識しかなかったが、いざ読み出すと、主人公が今の自分に近い年齢ということもあり、かなりのシンパシーとリアリティーを感じて、上下2巻、一気に読んでしまった。もちろん脚色されているとは思うが、途中何度もこみ上げてくるものがあり、どうも年齢とともに涙もろくなったようだ。また月並みな表現だけど元気をもらった。最後の最後まであきらめない執念や、人との出会いの大切さも再認識させられたが、結局誰にも同じような出会いがあるわけではなく、その人の持つ人間性や魅力が、多分磁石のように周りの人を引き寄せるんだろう。と思う。
 百田氏の小説は初めてだったが、結構気に入ったので、そのままの勢いで、その時上映されたばかりの彼の映画「永遠のゼロ」を観に行った。確かに零戦の戦闘シーン、特撮などはハリウッドの真珠湾攻撃の映画「パールハーバー」とは比べものにならない低予算のCGで、若干迫力を欠いたが、そんなことはすぐに気にならなくなるぐらい、なかなかよく出来たというか、計算しつくされたストーリーで、ここでも私は何十年ぶりかに、涙がほほを伝わるのを感じるぐらい泣かされた。この映画には戦争讃美だとか、賛否両論あるようだが、変な先入観や理屈なしに、「エンターテイメント」として楽しめる映画だと思うし、楽しめばいいと思った。昨年末は百田ワールドを堪能させてもらったおかげで、記憶に残る年末でした。

このアジアの片隅で…「14」

怪しいお店、発見?

再び、ミャンマーの話題。

 街中に以前より気になっていた店がある。その店では、葉っぱの上に白い液体と香辛料のようなもの乗せ、その葉っぱを折り畳み一枚づつお客に売っている。タバコも一緒に売っている店もあるので、多分嗜好品のたぐいだろうと想像出来たが、葉っぱに乗せている ところが、何やら少し怪しい雰囲気で興味をそそられた。しかし、いくらミャンマーといっても、白昼に街の真ん中で怪しいものを売っていることはないだろう。
 一人の時には言葉の問題もあり、興味はあっても眺めているだけだったが、先日ミャンマー語の分かる知人と一緒の時、思い切って試してみた。結果は苦辛いというか、いろんな香辛料が入り混じった初めて経験する味で、一回噛んだ後、思わずすぐに吐き出してしまった。後で調べると、グン・ユエと呼んでいたこの葉っぱはキンマともいい、コショウ科の植物で白い液体の正体は石灰、ビンロウの実の胚乳部分を一緒に包んで、ガムのように噛んで、最後は吐き出す。私は味に耐えられず吐き出したが、吐き出して正解だったようだ。ただ、最近の若者にはあんまり人気がないようで、常用しているのは年配男性が中心のようだ。知人曰く、葉っぱそのものも、薬草としての効果があるようで、熱が出たり喉が痛い時は、ボイルしたお湯に葉っぱを入れ、お茶のように飲んだり、噛んでは虫歯の予防にと、まさにミャンマーでは万能薬として重宝されているとのこと。
 再び葉っぱの味を確かめようと、葉っぱだけ買ってかじってみたが、今度は単に辛いだけで、しばらくは口の中が麻痺したような感覚が残った。他のアセアン諸国では見たことがなかったので、これもミャンマー独自の文化、習慣のと言えるのではないだろうか。

このアジアの片隅で…「15」

映画観賞

 ある日曜日の午後、街に出たので映画を観ることにした。映画は何でも良かったけど、ミャンマー語の吹き替えや字幕は分からないので、画面だけで分かるような映画、アクションものを見ることにした。
 午後3時半からだと確認して、1時間前に窓口にいくと、既に売り切れ。さすが娯楽の少ないミャンマーらしいと思い、一度はあきらめ窓口を後にしたら、ダフ屋が寄って来て、3時半のいい席があると・・・。そこまでして見たくはなかったが、これを逃すとミャンマーで映画を見る機会はないような気がして、一応聞いてみたら正規の価格の2.5倍、5000チャット(5ドル)だという。席は下部席と上部席に分かれていて、正規の料金は下部が1000チャット(1ドル)上部が2000チャット(2ドル)。面白いことにミャンマーでは、時間帯によって料金が違う。朝が一番安く、遅くなるにしたがって高くなり、夜は朝の3倍近くの料金になる。
 結局、上部席を通常の2倍の4000チャット(4ドル)に値切って観ることにした。ダフ屋がいるぐらいだから、館内は予想通りぎっしり満員。上映前にはタイと同様、画面に国旗がはためいて国歌が流れ起立をするが、見渡すと感心なことに多くの若者含め、全員がちゃんと立っている。映画はモンキーキングという3Dが売り物のカンフー映画で、始まって10分ぐらいで入ったことを後悔したが、後の祭り・・・。
 まず驚いたのは、字幕は英語でミャンマー語訳は一切なく、吹き替えもなく中国語。ミャンマー人の英語レベルは多分、日本と同じぐらいと思われるから、ほとんどの人は、日本で吹き替えや字幕のない外国映画を見ている感覚に近いはず。まあ、この映画が筋はあってないようなものだから、言葉が分からなくても大して問題ないのかもしれないが、封切りの映画館で、これはあんまりではないかと、思わずミャンマー人に同情した一日でした。

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